解  説   青 野 守 (あおのもり)


 この曲は、普通には「野守」と云われる曲です。
 羽黒山の山伏が、大峰山へ詣る途中、奈良の春日野の飛火野で由ありげに見える池水の由来を、来合わせた野守の翁に尋ねます。野守の翁は、このみずを野守の鏡と言う謂われや、敏鷹の野守の鏡と詠まれた謂われなどを語って聞かせました。山伏はその話にあった鬼神の持つ鏡を見たくなりましたが、見ると恐ろしいからと云って翁は鬼神の住む塚の中に入ってしまいました。
 山伏は、年来の行を積んだ功力を頼りに一心に祈りますと、鬼神は鏡を持って姿を現し、鏡に映る世界を見せ、その鏡を山伏に与えて、奈落の底に帰って行きました。

 今回は、曲名に有りますように、「青野守」となっています。喜多流では、通常の小書よりも重く扱う時に、曲名を変更します。よく知られている曲には、「猩々乱」があります。この「青野守」は、後の装束が萌黄色に統一されます。春の野の萌え出ずる気配を、強調する意味があります。この度、明治以来初めての復活です。


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